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着眼大局 着手小局 経営に求められる人間力 第2回

【着眼大局 着手小局】経営に求められる人間力
第2回
人間力の土台となるものとは
志を持ち続けることの重要性

 人間力の中で基本的で最も大切な事、いわば土台となるものは何でしょうか。私は、何をおいても志であると考えています。幕末に生き、後の明治維新において重要な役割を果たす、多くの青年を育てた吉田松陰は、「志を立てて以って万事の源とする」と伝えています。今回はこの志について、持ち続けていくことの重要性について述べていきます。
 志という言葉は、「心指す」が語源といわれています。漢字を構成する「士」は、進み行く足の形であり、心が目標を目指して進んでいくことを表しています。この由来にあるように、一直線に志という人生の頂に向かって突き進んで行きたいものです。
 しかし、現実には如何ともし難いことも起きます。これに対し、数多くの伝記小説を執筆した城山三郎氏は、著書『打たれ強く生きる』の中で、第三の道を重要視し、千利休と呂(ル)宋(ソン)助左衛門の生涯を比べています。 利休は戦国時代、羽柴秀吉の後光を得て茶の文化を発展させ、名声を上げた人物でしたが、秀吉と袂を分かってしまいます。翻意して秀吉に媚びるか、逆らって殺されるか、という局面に陥ってしまい、結局、自ら命を断つという選択をしてしまいます。
 同じように助左衛門も堺の豪商であり、あまりに優雅を誇ったため、秀吉の評を落としてしまいました。しかし、彼は利休とは違いました。助左衛門は、処断される前に、当時、誰も思いつかなかった第三の道を選び抜きます。日本からの脱出です。彼は命を落とさずフィリピンに渡り、後年はカンボジア国王の厚い信任をうけて再起を成し遂げ、当地の発展に大いに寄与したと伝えられています。城山氏は、夢を追って、志を追ってひたむきに人生を駆け抜けた彼を、このように言っています。「人生には第三の道があることを信じ、第三の道に生きた男でもあった」と。このように、志という頂に向かう道すがら、困難に出会おうとも、視座を高く持てば、必ず何らかの道を見つけることができるのではないでしょうか。
 松下政経塾の塾頭を努めた上甲晃氏は、「頂上を、人生の志と考えたらいい。途中で遭遇するあらゆる困難を、逆境と捉えるとしたら、まさに志は、逆境に耐え、逆境に育てられるための必須条件とも言えよう」と語り、逆境こそが人を育て、志を強いものにしていくと訴えています。
 困難なとき、目標を見失いそうになったときこそ、志を燦然(さんぜん)と掲げ続ける。私たちには、そんな生き方が求められているのではないでしょうか。

加藤 滋樹

 

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