生産性向上に向けて

前回の拙稿では生産性向上を切り口として、物事を前へ前へと進めていくための具体的なコミュニケーションの重要性について書きました。今回はもう少し長期の視点で、生産性向上に向けた解決策を皆さま方とともに考えていきたいと存じます。

一つ目は、長期コストを考えることです。このコストには、直接的な経費のほかにも、時間や人的なリソースも当然入ります。私たちは、目に見える支出といったコストは意識をしますが、始めに少し高いコストを負担すると、結局は長期間で発生する全体コストが低く抑えられるということに意識が向かないことが往々にしてあります。このように、長い目で見た全体的なコストについても意識を向けてはいかがでしょうか。

二つ目は、行動する前に調査をするということです。戦略ということばは「戦いを略す」と記すように、何かの行動を起こしていくときは過去の例や、周辺環境など、起こり得る可能性を考えた上で、最善の策を選択することが重要です。アメリカの作家・企業家教育者のスティーブン・リチャーズ・コヴィー博士は、「私たちはえてして、問題が起きると慌ててしまい、 その場で何か良いアドバイスをしてすぐに解決しようとする」と指摘しています。

三つ目は、環境を変えることです。中国・北宋時代の欧陽脩(おうよう・しゅう)という文学者は、ひらめきが生まれる場所を「三上(さんじょう)」ということばで言い表しました。三上とは、馬上(馬にのっているとき)、枕上(布団に横になっているとき)、として、厠上(トイレにいるとき)です。このことばのように、普段と違う環境にあるだけで、脳が刺激され、面白い発想が生まれてくることがあります。時には場所を変えてみるのもいかがでしょうか。デスクから離れてソファで仕事をしてみる、ミーティングスペースにこもってみる、オフィスから外にでてカフェなどで仕事するとはかどるという人もよく聞きます。さらには、散歩をして外の空気を吸ったり、可能ならば短い昼寝をとってみたりするのはいかがでしょうか。また、普段夜型の人は、たまには朝早起きして仕事をスタートするのもよいかもしれません。

最後に、逆説的ではありますが、「生産性を向上させなければ、これまでと同じ成果が出せない状況を作り出す」ということも、有力な方法といえそうです。大上段に構えなくても、例えば紙媒体の資料を探すことにかなりの時間的コストがかかっていたものを、資料をスキャンすることで、瞬時に検索できるようにするように変えていくことも、その一つの手法になります。

AI 時代を主体的に生き抜いていくために、私たちは、やり方を変え、根本から見直し、そしてより付加価値の高い仕事を心がけていきたいものです。

 

 加藤 滋樹