中部経済新聞に掲載されました
着眼大局 着手小局 経営に求められる人間力 第19回

【着眼大局 着手小局】経営に求められる人間力
第19回
リーダーの視点から全体へ語りかける視点へ
“共感”生む2文字を意識

 “Yes, We Can”
 サブプライムローン問題に端を発した世界的な金融不安の真っ只中、2009年1月に米国大統領にバラク・オバマ氏が就任しました。米国立て直しに向けたオバマ氏の演説に度々登場したこのフレーズは、多くの人たちに力強い共感を与え、主体的な行動を促しました。
 多くの人たちを巻き込む。今回は、そんなことばについて考えていきます。
 全員が一丸となっているチームは前に進んでいく力は強く、また、その力は継続するものです。それでは、一体感を生み出し、それを継続していくためには、どのような考え方をし、どのようなことばを使ったらよいのでしょうか。
 重要視したいのは、オバマ氏のフレーズにある“We”の視点です。「私たち」「我々」「僕ら」といった複数形である第一人称の主語を使うことです。たとえば、提案書や企画書などを対外的に発表するとき、それが、たとえメンバーのうちの一人が作り上げたものであったとしても、「私たちの提案は」と言ったり、議論を交わすときにも「我々はそのようには考えません」という言い方を使ったりすることで、「チーム全体の仕事」という意識を高めていくことができます。
 本来、「あなた」や「君」という主語を使うときに、この「私たち」や「我々」ということばに切り替えて使うことは、共感を生みだす効果が高まります。たとえば、所属メンバーとのコミュニケーションにおいて一線を引き、自分の役割について限定をしたがる傾向にある人がしばしば見受けられます。そのような人に対しては、「それ、あなたの仕事ですよね」と言ってしまうと、突き放すような印象を当事者やそれを聞いた他のメンバーに与えてしまいます。しかし、「それは、私たちの仕事ですよね」と言い換えることだけで、随分と印象が代わります。 また、「私はこのように考えています」と言うのか、「私たちはこのように考えています」と言うのかで、相手に与える印象、力強さは大きく違います。つまり、たった二文字の「たち」という文字が加わるだけで、大きな違いがあります。
 この言い換えを意識して繰り替えしていくと、自分の影響力はもちろんのこと、まわりの空気が変わってくるのを感じるはずです。そしていずれ誰かが、同じように「私たち」と言い始めるときが必ず来ます。その瞬間こそが「私たち」のチームが大きな存在として変革していく契機になるのではないでしょうか。

加藤 滋樹

 

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