中部経済新聞に掲載されました
着眼大局 着手小局 経営に求められる人間力 第21回

【着眼大局 着手小局】経営に求められる人間力
第21回
もう少し、深く考えることができたら
文章に書き時をおいて見返す

 他人とは違う、今までの自分とは違う、もう少し深い考えを持ち、相手に伝えることができたら・・・と思われる方は多いのではないでしょうか。
 普段から見ているようなニュースや、自分が担当する仕事の情報のみに触れていると、考えや志向が一辺倒になりパターン化してしまいがちです。それでは、ありきたりの考えしか生み出せません。経営のかじ取りをおこなったり、リーダーとして新たな地を切り拓いたり、新しいアイデアを相手に話したり、そのような役割を担う私たちには浅く広い知識も大切ですが、一方で深く考えることも多くの場面で要求されます。
 深く考えていくということはどのような作業なのでしょうか。そのことを具体的に考えていく前に、私たちが一般的に行っている「考える」という作業を見返してみます。はじめに、あるテーマについて頭の中にある断片的なアイデアを、メモなどの形で頭の外に出す。次に、そのアイデアを俯瞰(ふかん)し、眺める。最後に、それらを捨選択し論理立てて考えをまとめる。この3つの流れが考えるときの一般的な順序です。
 この作業を行うなかで、俯瞰し、論理的に考えていこうとするときに、「もう一人の自分」という存在が現れてきたという経験をお持ちの方がおられると思います。これが深く考えるときの重要なポイントになります。賢明なもう一人の自分に出会うと、素晴らしい力を得ることができます。私たちは物事を理路整然に積み上げていくことが考えることだと思っていますが、それだけでは考えるという作業が一段階掘り下がっただけに過ぎません。その段階を突破し、より深い部分にたどり着くには、もう一人の自分の存在が重要になってきます。
 もう一人の自分を呼び出す、明らかな手法があります。それは「自分の考えを文章にする」ということです。文章を書き、そののちに時をおいて心を鎮め、自分の文章を眺め、それを読み返すと、心の奥深くからもう一人の自分が現れてきて、自分の囁きを呼び起こしてくれます。その結果、新たな視点、異なる視座で考えを深めていく契機となります。
 深く考えるには、それを文章として書いた後に、時をおいて見返すこと。これこそがもう一人の自分に出会い新たな観点に出会うきかっけとなります。このプロセスを重要な技術として持っているかどうか、意識できるかどうかということが私たち自身の深く考える力につながっていくのではないでしょうか。

加藤 滋樹

 

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