中部経済新聞に掲載されました
経営者のためのコミュニケーション心理学 第3回

経営者のためのコミュニケーション心理学
第3回
心のあり方=マインドセット
しなやかな観点で評価を

 偉大な功績をあげた人と、あげられなかった人とでは、いったいどこが違うのでしょうか。周囲の人たちなぜあんなふうに振る舞うのでしょうか。私たちの可能性を最大限に引き出すにはどうすればよいのでしょうか。
 社会心理学の世界的権威であるスタンフォード大学のキャロル・ドゥエック博士は、人生において単純な信念が大きく左右することを発見しました。それは、心のあり方=マインドセットです。
 マインドセットには大きく分けて2種類、硬直マインドセット(fixed mindset)しなやかマインドセット(growth mindset)があります。  硬直マインドセットの人たちは、「自身の能力は石版に刻まれたように固定的で変わらない」と信じています。周囲から「才能がある」と思われるために、能力を繰り返し証明し、他人から評価されることばかりに心を奪われています。無能な人間だと思われてしまうことを最も恐れています。有能だとうぬぼれる一方で、うまくいかなかったときの落ち込みはひどく、挫折への耐性が弱いのが特徴です。
 しなやかマインドセットの人は、「人間の基本的資質は努力しだいで伸ばすことができる」と考え、つまずいたときでも粘り強く頑張り、挫折や失敗から学び、前進を続けることができます。また、自身を向上させることに関心が高く、難しいことにも挑戦することができます。
 経営者の特徵としては、硬直マインドセットのリーダーは「人間には優劣の差がある」という信念から出発しています。一方で、しなやかマインドセットのリーダーは「人間の基本的資質は努力しだいで伸ばすことができる」という信念から出発しています。
 私たちはチームのメンバーに対してどのような態度をとっているでしょうか。部下のことよりも自分の影響力を守りたがる、硬直マインドセットのリーダーになっていないでしょうか。
 組織を飛躍させていくためには、しなやかマインドセットのリーダーが求められています。具体的には、エリート主義の根絶、オープンなコミュニケーション、多様な考え方を受け入れていくことがそれにあたります。
 最後に、マインドセットには伝染性があるということも証明されています。私たちのマインドセットはチームのメンバーに伝わり、組織全体にも広がっていきます。つまり、一番大切なことは、私たちこそが意識するということです。気づいた私たちから、自身と組織をしなやかな観点で再評価し、成長への端緒を探してみてはいかがでしょうか。

加藤 滋樹

 

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