経済産業省「ものづくり補助金」と経営指標との関わり

 中小・小規模企業の設備投資を促す「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金(通称:ものづくり補助金)」の本年1次公募の採択結果が、6月29日に明らかになりました。
 ものづくり補助金は新商品や新サービスの開発に必要となる設備投資を上限1,000万円まで支援するもので、所管する経済産業省中小企業庁の人気施策のひとつです。その名称から、「製造業限定では」と意識をされる方も多いのですが、実際は、サービス業や卸売業、小売業の方々の採択も多いことでも知られています。
 今回の1次公募における申請者は前年度比11%増の17,275件でした。また、採択件数も、対前年比55%増の9,518件と大幅に増加しました。1次公募の採択率は55%で、予算を1,000億円に増やした効果により、前回の採択率40%から大幅にハードルが下がっています。
 しかし、一方で、課題も出てきています。一番大きな課題は、1次公募での事業完了期限が12月末と定められていたことです。私どもにご相談をいただいた企業においても、発注先メーカーの納期が間に合わないことにより、申請自体を諦めた企業も多く見受けられました。
 続いて、私どもが関与をしました申請書を見る中で、ポイントとなる指標を述べていきたいと思います。初めに、QCDの視点です。生産管理の基本的指標である、クオリティ(品質)、コスト(費用)、デリバリー(納期)について、自社の取り組みと、競合他社や従来品との差別化が明確になっているかという視点です。加えて生産性に関する要件もあり、設備投資によりどの程度付加価値が伸びるかということも、数値と説得力のある根拠で示していく必要があります。
 そして、最後に、私たちが一番重要であると考える論点が「手段主導型」か「目的主導型」か、という視点です。手段主導型とは、設備投資をしたいがために申請を行うというスタンスのことです。一方、目的主導型とは、経営目標における課題解決のために設備投資を行う、というスタンスです。端的にいうと「〇〇という目的(もしくは課題解決)のために、△△という設備を導入する」というものです。採択結果としては、後者が高いことが伺えます。実は、ものづくり補助金とは、補助金のために設備投資を行うのではなく、いわば「自分たちは何をしていきたいのか」ということを明確化することが問われている支援制度であるとも言えます。
 最後に、ものづくり補助金の2次公募は8月3日からスタートしており、9月10日締め切りで、事業完了期限は来年1月末となっております。事業分野に関わらず幅広い業種が対象となっておりますので、新規事業や新サービスを考えている企業経営者の皆さまはご検討をされてはいかがでしょうか。


加藤 滋樹