中部経済新聞に掲載されました
経営者のためのコミュニケーション心理学 第12回

経営者のためのコミュニケーション心理学
第12回
「ピグアリオン効果」
教師の期待により学習者の成績が向上
 

 「褒められると自分は伸びる」―。このようなタイプの人は多いのではないでしょうか。
 「この人は私を信じていてくれている、期待をしていてくれている」と感じたとき、人はその想いに応えたいという気持ちになり、実際に行動に移していきます。
 米国の心理学者であるロバート・ローゼンタールは、1964年に「教師の期待によって学習者の成績が向上する」という効果があることを証明し、これをピグマリオン効果と名付けました。ピグマリオン効果は別名「教師期待効果」とも呼ばれており、教育現場だけではなく企業での人材育成や日常の人間関係にまで役立つことが知られています。
 もっとも身近な活用例としては、部下や同僚などに期待を込めた声がけをすることがあげられます。すなわち、冒頭に紹介した褒めることです。もちろん、相手に「甘い」ということとは違いますし、間違っている部分を注意することは大切です。しかし、同時に褒めることも忘れてはいけません。叱るだけ、押し付け強制するだけでは望んでいる結果と真逆の結果を生んでしまう可能性もあります。そうではなく、叱ることと褒めること、すべての原点に相手への期待があることが重要です。
 例えば、仕事でミスや失敗をしてしまった部下に対して「今回は失敗してしまったけど、○○さんの仕事への評価はしているよ。次回は今回の注意点をふまえて頑張っていこう」といった声がけはそれにあたります。
 また、このピグマリオン効果は自分にもかけることができることで知られています。たとえば、受験勉強をしている学生の部屋に「必ず合格する」という言葉を掲示することは、代表的な例です。他にも、仕事で使う机の上を整理整頓しておくこと、夜更かしをせず早寝早起きを心がけることは、自分への期待を強く暗示することとなり有効です。逆に、汚い机や不摂生に慣れてしまうと、「自分なんてどうせ・・・」といって自分の評価を自分で下げてしまうことに繋がってしまいます。
 最後に私の例を一つご紹介します。それは、手帳のはじめのページに好きなことばを書くということです。今年の手帳には、愛知県で生まれた著名な哲学者である森信三氏の「逆境こそは神の恩寵的試練なり」が記されています。誰しもが、日々自分にとって都合がよいことばかり起こるわけではありません。自らが主体的に道を切り拓き、前へ進む端緒として、このピグマリオン効果を生かしていきたいものです。

加藤 滋樹

 

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