中部経済新聞に掲載されました
経営者のためのコミュニケーション心理学 第1回

経営者のためのコミュニケーション心理学
第1回
熱意あふれる社員が少ない日本
エンゲージメントが年々低下

 「日本では熱意あふれる社員の割合が6%しかいない」―。
 昨年話題となった、米国ギャラップ社のエンゲージメント調査から明らかになった事実です。この調査は、世界各国の企業に勤める従業員を対象としたもので、日本の6%は、米国の32%と比べて圧倒的に低く、調査した139カ国中132位、最下位クラスであるという驚くべき内容です。
 エンゲージメントとは、会社に対する「愛着心」や「思い入れ」を表しますが、より踏み込んだ考え方としては、「個人と組織が一体となって、双方の成長に互いに貢献しあう関係」をいいます。
 日本から熱意あふれる社員がいなくなってしまったのは何故でしょうか?
 日本人は、長期間一つの会社に働くことがまだまだ美徳とされています。しかし一方で、いろいろと厳しいルールがある上、柔軟性に乏しく、上意下達や一方通行型マネジメントへの配慮もあり、本音でのコミュニケーションは難しい。このため、職場のストレスは高い傾向があります。
 また、近年のコンプライアンスや忖度(そんたく)する文化の影響で、内外に向けての調整的な仕事が多く、社会の利益に繋がること、会社の向かっているベクトル、個人の成長について、自分自身が理解して前に進んでいくという実感が湧きにくい世の中にあります。
 先日訪問した企業でも83%の人たちが、「貢献意欲が高い」とこたえました。このように、私たち日本人は、「自発的な意欲」を、もともとは高く持っているはずです。しかし、押し寄せてくる目の前のことに追われ、部分最適、短期最適に陥り、物事が俯瞰(ふかん )できず視野が狭くなってきている傾向が年々強くなってきています。前述の調査によれば、エンゲージメントを上げ、成果を上げていくためには「思考様式や価値観の多様性を受け入れ、成長に向けて本音で向き合うこと」が必要であるとされています。
 本稿では、「言うは易く行うは難し」であるコミュニケーションをテーマに、経営の方向性や生産性向上のための羅針盤を示すことができればと考えております。皆様からのご意見・ご感想もお待ちしております。

加藤 滋樹

 

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